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スタッド溶接不良の原因と対策

建築関係、事務機器関係、電気機器関係など様々な業界で使用されるスタッド溶接。その不良でお悩みの溶接作業者、品質管理者の方はいらっしゃいませんか?

本記事では皆様のお悩みを解決するため、スタッド溶接の品質を不安定にさせる原因とその対策について解説します。

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スタッド溶接の不良を起こす原因と今すぐできる対策

スタッド溶接の品質が安定しない背景には1つの原因だけではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。ここでは、スタッド溶接の不良を引き起こす主要な9つの原因に焦点を当て、それぞれの原因と今すぐできる具体的な対策を解説します。

設定電圧が適切でない

電圧が高すぎると、アークが過度に強くなり、母材に溶け落ちが生じたり、過度なスパッタ(火花のような金属の粒)が発生して溶接部の周囲に焼けが広がる原因になります。

一方で、電圧が低すぎるとアークが十分に安定せず、スタッドボルトが母材と十分に溶融しません。その結果、溶け込み不足となりスタッドボルトが母材にしっかり接合されずに打撃曲げ試験で簡単に外れてしまうような強度不足を起こします。

解決策は「試験溶接」の実施です。スタッドボルトの材質や径に応じた最適な電圧範囲を見つけることが不可欠です。溶接条件を少しずつ変えながら数本のスタッドボルトを溶接し、その都度、打撃曲げ試験を行って、最適な条件を特定します。


加圧力が強すぎる・弱すぎる

加圧力が強すぎるとアークによって生成された溶融池(溶けた金属のプール)が母材の外側に押し出されてしまい、スタッドボルトと母材の間に適切な接合面積が不足し、強度不足になります。

加圧力が弱すぎるとスタッドボルトが溶融池に沈み込まず、母材との接合面積が不足し強度不足になります。

溶接ガンの加圧調整を行い、適切な加圧で作業することが基本です。

\溶接条件の調整が容易になり、作業効率と品質を向上させたお客様事例もございます!/


母材の表面状態が悪い(油分、汚れ、錆、皮膜、メッキ、塗装)

油分や塗料はアークによって燃焼し、気泡(ブローホール)を発生させる原因になります。
また、塗装は絶縁となり、全くアークが発生しない場合があります。

錆や厚い酸化皮膜、亜鉛メッキなどは電気抵抗が大きいためアークの立ち上がりを阻害したり、アークが飛び跳ねて不安定になったりします。これにより溶け込み不足やスパッタの増加、ブローホールの発生を助長します。内部に気泡が含まれていると、打撃曲げ試験で簡単に外れてしまいます。

母材表面を確認することで不良を防ぐことができます。


アースの取り付け位置や接触が不適切

スタッド溶接では、安定した溶接電流を供給するために「アース」の役割が非常に重要です。アースの接触不良や溶接箇所から極端に遠い位置にアースを取り付けている場合、電気抵抗が増大し、電圧降下を引き起こします。

アースの取り扱いを徹底することが重要です。

(1)アースクランプの接地面が綺麗に整っているかを確認する。
(2)アースは可能な限り対角でとる。
(3)アースケーブルは定期的に点検し、被覆の損傷や内部の断線がないかを確認する。


溶接ガンのメンテナンス不足(チャック、レグの摩耗、シャフトの動き)

チャックの摩耗:スタッドボルトをしっかりと保持できなくなり、スタッドボルトのネジ部がショートする
レグの摩耗  :ガンの垂直度が保てず、不良を引き起こす原因になる
シャフトの動き:動きが悪くなると溶け込み不足や強度不足の原因になる

レグの片減がなく、水平が必須です。

溶接ガンの各部位

溶接ガンのメンテナンスは常に必要です。チャックやレグは消耗部品です。必要であれば新品に交換してください。


極性の設定ミス

極性の設定を間違えると、溶け込み不足で強度が不安定になります。

正極接続(ガンをマイナスに接続)

逆極接続(ガンをプラスに接続)

材質を確認し、極性を設定しましょう。

正極接続:鉄・ステンレス・アルミ
逆極接続:鉄(ボンデ鋼板)は逆極性にて行う場合がございます。


スタッドボルト、袋ナットの材質・形状が不適切

スタッド溶接に大きく影響を与える要素にスタッドボルトの材質や形状が挙げられ、溶接不良・溶接強度低下の原因になります。適切なスタッドを使用してください。

品質問題を回避するには、信頼できるメーカーの純正品や推奨品を使用することが重要です。新しいロットのスタッドボルトを導入する際は必ず試験溶接を行い、打撃曲げ試験などで品質を確認することでより安定した溶接品質を維持することができます。


ポンチ(センターマーク)の深さにばらつきがある

位置決めのポンチ穴が深すぎるとスタッドと母材の空間が無くなり強度の無い溶接となります。

母材と溶接部の間に突起高さ分の空間を保つことが必要です。
ポンチの深さを一定に保つための対策として、スプリングポンチを使用することや、作業者全員がポンチ作業自体の重要性と正確に打つ方法の教育を行うことが必要になります。


パワーケーブルの断線

ケーブル内部での部分的な断線は、溶接機からの電力を十分にスタッドボルトに伝えることができなくなり、本来必要な電圧値が得られません。これにより、溶接機の条件設定を最適にしても打撃曲げ試験で不合格になるような不良が発生しやすくなります。

溶接作業前にパワーケーブルの外観を目視で点検し、著しい劣化がないかを確認してください。

まとめ

スタッド溶接の不良の原因とその対策について解説しました。

皆さんの日々の業務の中で改善したい点や効率化したい点ございましたらお気軽に大同興業までご連絡ください。

\高品質なスタッド溶接機を探されている方へ/

産業機器部/部門長 坂野敏庸
産業機器部/部門長 坂野敏庸
入社33年。職長・安全衛生責任者の資格を持ち、現場と設備の両面からお客様をサポートしてきた営業担当です。 なかでも薄板に関わる抵抗溶接やスタッド溶接の知識には自信があり、条件・品質・生産性のバランスを見極めた技術提案を得意としています。現場の課題を正確に把握し、最適な方法を一緒に考える「相談しやすい営業」であることを心がけています。表面的な提案ではなく、根拠と実績に基づいた改善策をわかりやすくご提案し、信頼と納得をいただける対応を目指しています。